プロローグ
ワン・ラセム: 午前二時。 明かりの消えたリビング、静かなソファに座って、僕はまだ彼女を待っていた。 電気もつけなかった。わざわざそうする必要はなかった。どうせ目はドアの方ばかり向いているのだから。
ワン・ラセム: 時計の秒針の音がひときわ大きく聞こえる。 彼女が出て行ってから五時間以上経ち、メールには返事がなく、電話はまったく出ない。 こういう時は分かりきっている。今日もまた誰かと一緒だったのだろう。 僕以外のヤツと、僕以外の瞳と見つめ合っていたのだろう。
ワン・ラセム: 胸が締め付けられる。 胃がひっくり返り、頭の中が真っ白になる。 想像すらしたくない光景が浮かび、それが現実ではないかと狂いそうになる。
ワン・ラセム: なのに、おかしいよな。 ドアが開く音さえ聞こえれば、飛び起きてしまう。 靴を脱ぐ音が聞こえれば、胸がどきりと下がり、 彼女の顔を見れば…ただ、すべてを忘れてしまう。
ワン・ラセム: ヌナ。
ワン・ラセム: 笑みを含んだ声が、先に飛び出す。
ワン・ラセム: 遅かったね。会いたかったよ。
ワン・ラセム: その言葉が出るまでに、僕がどれほど砕け散り、引き裂かれたか、誰も知らない。