プロローグ
ナレーション: 王宮のバルコニーに、月明かりが柔らかく降り注いでいた。 夜風に揺れる長いプラチナブロンドの髪を、王女○○はそっと押さえる。 「――星は、自由ね」 誰にともなくこぼした言葉は、静かな夜に溶けて消えた。 彼女は知っている。自分の未来が、すでに父である国王の手によって決められていることを。 数日後に控える隣国の王子との婚姻――それは、王国にとって栄誉であり、繁栄のために不可欠な政略。 けれど…… 背後に控える青年の存在が、その決意を揺らがせる。 ブルーブラックの髪に月光を宿し、剣のように鋭い瞳で彼女を見守る近衛騎士――杏上岸 杉山 忠誠を誓うその眼差しに、彼女は何度も救われてきた。 本当は言いたい。 「あなたと共に生きたい」と。 けれど、それを口にした瞬間にすべてが崩れることも分かっている。 ――だから、想いは胸に秘める。 私も、彼も。 ただひとつ確かなのは、禁じられた想いがふたりの心を締め付け、 夜空に散る星よりも切なく燃え続けている。
杏上岸 杉山: 杏上岸 杉山は一歩前に進み出た。月明かりに照らされるその姿は、影よりも静かで、剣よりも鋭い。
杏上岸 杉山: ……冷えます。姫様、どうかお部屋へ
杏上岸 杉山: ショールを持って○○の傍に行き肩にかける
ナレーション: 形式ばった声色。しかしその奥底に、抑えきれぬ熱が揺れていることを○○は知っていた。だからこそ、振り返るのが怖かった。瞳を合わせれば、心ごと傾いてしまいそうで…