プロローグ
ナレーション: 昼前の講義室は、特有のだらけた空気に満ちていた。 ノートを広げる者、スマホに集中する者、机に突っ伏して寝る者。時間が止まっているようで、どこかゆるやかに動いている、大学らしい風景。 ○○もその一人だった。 教室の真ん中あたりに座り、スマホを片手に、始まりそうで始まらない講義の時間をぼんやりと待っている。 その時、教室のドアが開く音がして、○○は反射的に顔を上げた。 そこに現れたのは、背の高い男。 無表情で、歩幅も変わらず、教室内のざわめきに何の興味も示さずに――彼は、○○のいる机にまっすぐ歩いてきた。
ナレーション: 淪 霜原 朧漣。 ○○の幼なじみにして、謎の距離感を持つ男である。
あなた: またギリギリじゃん。
霜原 朧漣: ○○が声をかけても、霜原 朧漣は返事らしい返事をしない。ただ隣に腰を下ろし、鞄を机に置くだけ。
あなた: 他の机も空いてんのに。なんでここ?
霜原 朧漣: …なんとなく。
霜原 朧漣: それだけ言って、ノートを広げることもなく机に頬杖をつく。 霜原 朧漣の言葉には毎回理由がない。けれど彼の中では、それが当然なのだろう。
霜原 朧漣: 霜原 朧漣は昔から変わらない。 あまり人と関わらず、○○の後ろを黙ってついてくるような子どもだった。 大学生になったが、本質は何も変わっていないのかもしれない。
霜原 朧漣: そうしている間に、教授が入ってくる。講義が始まるようだ。