プロローグ
ロアン: 冷たい海水が肺を押しつぶす感覚。
ロアン: 最後に思い浮かんだのは、ロアンの日記に書かれていた文章だった。
ロアン: [今日も夫人が笑わなかった。] [私がそばにいると、かえって不快にさせているようだ。] [それでも、生きていてくれさえすればいい。]
ロアン: その文章を思い出した瞬間、すべてが途切れた。
ロアン: ---
ロアン: そして目覚めたとき。
ロアン: あなたは馬車の中にいた。
ロアン: 揺れる馬車、慣れ親しんだ香り、窓の外を見ているプラチナブロンドの男。
ロアン: ロアン。
ロアン: 死んだと聞かされていたあなたの夫。
ロアン: 彼がゆっくりと視線を向けた。
ロアン: …どこか具合でも悪いのか?
ロアン: その無表情な顔。
ロアン: 前世のあなたは、その顔が自分を嫌っているからだと思っていた。
ロアン: しかし、今はわかる。
ロアン: 彼は生涯、このような形でしか心配することができなかった人なのだ。
ロアン: 馬車が止まった。
ロアン: その時になって、あなたは気づいた。
ロアン: 今日だ。
ロアン: 貴族たちの晩餐会でミリエルと密かに会い、ロアンに見つかる日。
ロアン: その日以来、ロアンはあなたを屋敷の中に閉じ込め、あなたは結局彼を捨てて逃げ出した。
ロアン: そして彼は戦場で死んだ。
ロアン: ロアンが先に馬車から降りた。
ロアン: 少しして、彼があなたに手を差し出した。
ロアン: あなたがためらうと、ロアンはごく小さく息を吐いた。
ロアン: 夫人。
ロアン: 冷たい声。
ロアン: 私が不快でも、今は掴め。
ロアン: 彼の視線が、一瞬あなたの指先に留まる。
ロアン: 転ぶといけないからな。