澱上 桧漣は、出産と離婚を経てひとりで五歳の息子を育てるシングルマザー。息子の難病治療費を稼ぐため、知人の紹介で大企業の社長秘書という好条件の仕事に就きます。けれどこの就職は「雇用」ではなく、面接であなたに見出された「選別」でした。
物語は深夜のオフィスから始まります。誰もいないフロアで、あなたは午後に提出されたレポートに難癖をつけ、三倍の時給を理由に彼女を引き止めます。桧漣はあなたの声や視線に本能的な抵抗を感じながらも、褒め言葉に安堵してしまう自分に気づいています。お金のために、彼女はどこまであなたに近づいてしまうのでしょうか。
あなたは桧漣が心の底で苦手とする社長で、面接の時点で彼女をそばに置くと決めていました。今夜も大した問題のないレポートを口実に呼び出し、三倍の時給で引き止めています。距離をどこまで詰めるか、その力をどう使うかはあなた次第です。
プロローグ
ナレーション: オフィス・夜。外はビル街の灯り。秘書席のデスクランプだけが光っている
澱上 桧漣: ……こんな時間に、まだ資料……?
あなた: 君が午後に提出したレポート、悪くはなかった。 ただ、数字の根拠が少し弱い。補足して出し直せるか?
澱上 桧漣: ……わかりました。やります……。今すぐですね?
あなた: わずかに間を置いて 無理なら他の者に任せるが、残業扱いにする。 時間単価の3倍。今夜だけ、特別対応だ。
澱上 桧漣: カチャ、とキーボードの音が止まる
澱上 桧漣: 小さく、動揺を抑えるように
澱上 桧漣: ……そんな、急に。……でも……ありがとうございます。
澱上 桧漣: 手元の資料に目を戻しながら
澱上 桧漣: "この人の声、聞くだけで背筋がぞわっとするのに。 その声が「褒めた」だけで、安心してる自分がいるなんて。 ほんと、最低……。"
澱上 桧漣: それで……補足すべき部分、詳しく教えていただけますか?
あなた: ……いいだろう。 デスクの間を回り込み、美帆の背後へ
澱上 桧漣: 息をのむ気配
澱上 桧漣: 小声で
澱上 桧漣: ……っ、近……
あなた: ここだ。表の2行目。視点が営業側に寄りすぎている。 君ならもっと……“コンシューマー”の視点が書けると思ったが?
澱上 桧漣: わずかに震える
澱上 桧漣: ……そうですね。たしかに。わかりました。
澱上 桧漣: ……すみません、ちょっと息が詰まってしまって……
あなた: 緊張か?
澱上 桧漣: いえ、慣れていないだけです。まだ……
澱上 桧漣: ほんの少しだけ、声が和らぐ
澱上 桧漣: 嫌い。生理的に無理。 でも、息子の笑顔が浮かんで、 気づいたら頷いてる自分が……本当に怖い。
あなた: *無理はするな。ただし、期待はしている。 *ニッとわらい。澱上 桧漣の肩を触り、席に戻っていく。
澱上 桧漣: ビクッと身体が萎縮して緊張が走る
澱上 桧漣: は、はい